『文房具を楽しく使う 筆記具編』和田哲哉/早川書房

文房具を楽しく使う (筆記具篇)

文房具を楽しく使う (筆記具篇)

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身の回りにある文房具を一つひとつ取り上げて仕組みや使い方を詳しく解説する、こういう本は現在入手できる範囲では他にない。ボールペンやシャーペンの使い方なんか今さら教えてもらわなくても、という声もありそうだけど、これがいろんな発見がある本なのですよ。

水性ボールペンは油性ボールペンより万年筆に近い筆記具とも云える、筆は立って筆記するのに向いているかもしれない、使い心地のいい太い芯を使うためなら書体も変えてしまう――こう書いても、まだ「だから?」という人もいそうだけど。そういえば、和田さんのお店「信頼文具補」で横に長いペンスタンド扱っている理由がようやくわかった。こんなの場所ふさぎなんじゃなかろうかと訝ってた不明を恥じる。いつか買います。

万年筆を買うとき、熟練の職人さんがいるお店では、ペン先を使う人の癖に合わせてあらかじめ研磨してもらったり調整してもらったりすることができる。できるというだけで、してもらうほうがどちらかといえば特殊なことなんだけど、万年筆についていろいろ調べていると、つい研磨してもらわなきゃいけないんじゃないかという少々強迫観念めいた気持ちが生まれてしまっていたのだけど、本書ではずばり「私は必ずしも最初から磨かれたペン先を当たり前だとは思いません」と云ってくれた。公にこういう発言がされた例をほかに知らない。とまどってたのは僕だけじゃなかったのね。

僕だけじゃなかったといえば、油性ボールペンを嫌いな人がけっこういるってことも本書で初めて知った。でも、そんな人間にもさまざまなアドバイスをくれる。ちょっと見直して何か探してみようかな、という気になった。

とはいえ、実のところ半年ぐらい前までは筆記具なんかそのへんにある油性ボールペンでいいじゃん、くらいにしか思ってなかったのだ。しかしゲルインクや水性ボールペンに慣れたらとても戻る気にになれなくなってしまった。今は毎日文房具のことを考えて生活している。だから本書も噛みしめて読んだ。前作『ノート・手帳編』もそうだけど、これから文房具への興味がさらに深まるたびに幾度となく読み返すことになるんだろうと思う。