途方に暮れるばかり

すごいものを見てしまった。DVDで『オアシス』。障害者のラブストーリー?泣かせようったってそうはいかないぜ、自慢じゃないが涙腺は硬いほうなんだ。……そんなの通り越して、あまりのことに涙なんか滲みもしないよ。

三十になろうかというのに刑務所を出たり入ったりしてマジメに生きる気もない、かといってワルとして開き直りもできないどうしようもない薄っぺらい男と世間から隔離された重度脳性麻痺の女の子、二人を取り巻く偽善と偏見に満ちた家族、隣人、警察。男はひき逃げで殺してしまった遺族のもとを訪れ、置き去りにされた重い障害を持つ女の子と出会い、いきなりやっちゃおうとする。おい!

ここまで凄まじい演技ってのもなかなか見られるもんじゃない。脳背麻痺を演じたムン・ソリは脊髄と骨盤がゆがんでしまったそうな。車椅子で暴れて警察署のロッカーにぶちあたるシーンなんか、取っ手に頭ぶつけて流血しやしないかとひやひやした。ソル・ギョングの激安野郎っぷりも神がかってるよ、あそこまでいくと。

実はいくらか作品評を読んでたので、そんなお手軽に泣けるラブストーリーじゃないことは知っていた。それにしても。日常の世界では見られないものを見せてくれるのが映画のいいところだと思う。だとしても、とんでもないものを見せられてしまった。あのラストは救いなのかなあ。ああ、おれどうすりゃいいのよ、と途方に暮れるばかり。